杉田明十志
Sugita Meijushi
静岡県生まれ
1990 多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業 88年末より独学で人形制作
個展、グループ展多数
2001年末より、伝統人形の原形制作を始める。
静岡市の亀山画廊で毎年開催される「ひなまつり(2月)」に参加。
現在は三月、五月の節句人形や干支人形など、伝統人形の原形を中心に制作を続けている。
福島県在住
URL http://www.hyakueido.sakura.ne.jp/
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桧
50cm
「とるにたりないモノたちのための哀歌―2019.11―(めばえ)」について
赤ん坊、幼子(おさなご)の人形を作る、ということは、自分の物心ついたころからの“さまざま”が積み重なっているようです。
自分ではまだ解きほぐしきれず、考えがまとまっていなくて、自分で自分に問いかけているところです…
雑駁ではありますが、思いつくままに書いてみます。
以前から、幼子の姿に、人間の本来の(魂の?)姿が現れている、という漠然とした印象があって、幼子の人形をいくつか作ってきました。
「2001年宇宙の旅」「炎628(come and see)」「トゥモーローワールド」など、“幼児の意味”につながる映像にも、かなり刺戟をうけています。
特に「トゥモーローワールド」の、“赤ん坊が生まれなくなった世界”には、強く心を動かされました。
人間の社会が、曲がりなりにも秩序を保っているようにみえるのは
“赤ちゃんが生まれる”ということに“疑いを持っていない”から、なのではないか………
タイトルについては、近年、深く悲しく思うことがいくつかあって、気づくことがあって、
「一人の人間はあまりに“とるにたりないモノ”だ…」と痛感しています。
(一方で、近親者にとっては“かけがえのない人”であることも、理解しています。)
人、動 物、物、あらゆるすべての“モノ”という意味を込めたかったので、片仮名表記にしました。
これからも、赤ん坊や幼子の人形を作りたいと思っていますが、この“哀歌”がまとまったら“讃歌”になるかも…と思っています。
(この作品を、“天使の様な赤ちゃん”を表現している、と思われる方もあるかと思います。
もちろん、そう思っていただいてもいいのですが、そういう“天国的な”純粋さを表現しようという意図はありません。
ぼく自身は、「幼児の純粋さ」というのは、“天使のような純粋”なのではなく
“犬や猫のような純粋”なのだと思っています(モーツァルトはきっとそういう人)。
◎制作上、気を配った点
木彫人形を製作するときは、関節人形であっても、出来るだけ“一本の木に埋まっている形を掘り出した”というように作りたいと思っています。
木目、年輪、上下が、頭から足首までぴたりと合っている、というのが理想です。途中で作り直したり、丁度いい大きさに木取りできないという場合もあって、
なかなか理想通りにいきませんが……出来るだけ合わせるようにしています。
首、手首、足首、腿の付け根は、球体関節にしました。首以外は、はめ込んであるだけです。
※木の素材につき、年月や天候により影響を受けることがあります。
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![](http://misorogi2019.nonc.jp/wp-content/uploads/2019/11/Kiboko-Lamento-from-Memento-Lamento-1024x477.jpg)
桧、アクリルガッシュ
5.5〜6.5cm
ぼくは、ものごとをネガティブに、自己否定的に考えることが多いのですが、一般的には「明るく生きなきゃ」とか「暗い顔してちゃだめ」とか
「もっとポジティブに」とかいわれるので、自分もそうならなきゃと思うのです。しかしそうすると“ネガティブな自分”を否定することになります。
それでもポジティブになれなくて、ああおれはダメだ…とさらにネガティブになって、どこまでも自己否定に落ち込んでしまいます。
いっそのこと“哀しい!”と表現してしまえ、と思い、「Memento Lamento」という、なぐり書きのような絵を描いていて、
その中からうまれたきぼこ(“こけし”というより“きぼこ”がいい)の絵を立体化しました。
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陶土 (蓋が底になります)
10cm
かつて天文少年だったので、惑星を形にしたいという欲求は、ずっとあります。人形屋さんの、月型の照明を作ってみたい、
という依頼で制作した原形を利用してつくりました。(照明の方は立ち消え…)
「ナミダツボ」は、「昔、泣き虫神さまが…」の歌から……
満月を、あまりよく見ていない方が、案外多いのではないかと思いますが、この月は、月儀や月の写真を参照しながら、
主なクレーターと海を出来るだけ正確に再現しました。
“海”の見える側を正面に、コルク栓を下にした状態が、満月が南中した時の見え方です。